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被災地で「木」が育む希望の芽
事例レポート01 木造にこだわった 仮設・復興住宅

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ポスト3.11と森:被災地で「木」が育む希望の芽

事例レポート01 木造にこだわった 仮設・復興住宅

事例レポート01 木造にこだわった 仮設・復興住宅

住田町から全国へ、木造応急仮設住宅

被災した多くの自治体が、プレハブの仮設住宅を準備していた今年4月下旬。震災から1か月半で、いち早く仮設住宅を木造で建設したのは岩手県住田町でした。壁や床まで気仙スギなど地元の木材を使った2DK約30平方メートルの一戸建て仮設住宅は、プレハブでは得られないさわやかなスギの香りと温もりを入居者にとどけました。

震災後これほど早く建設できたのには理由があります。もともとこの木造仮設住宅は、住田町の多田欣一町長が、町の基幹産業である林業活性化と木材の販路拡大の一策として、2011年初めに開発を指示。独自の構想に基づいて、東日本大震災以前に大まかな設計図まで完成していました。

床や壁に使う木材は、可能な限り町内のFSC認証材を使用し、町の木工団地にある加工工場でプレカット。現場ではそれらを組み立てるだけなので、部材が揃っていれば半日で建設が可能。1戸あたり約250万円というコストは、プレハブと比べても遜色はないといいます。断熱性や吸湿性に優れているのも木造ならではです。また、応急仮設住宅としての使命を終える2年後には、住宅はもちろん倉庫などにも再利用でき、最後は木質バイオマスとして活用できるという大きな利点があります。


丸太製材、住宅建材用プレカット加工、合板加工、燃料用ペレット加工など、どの行程でも対応が可能だという、住田町自慢の木工団地。


伐採地のひとつ。持続可能な森林経営を町が中心となって牽引する。

元来、住田町は「森林林業日本一のまちづくり」を標榜し、豊富な森林資源を活かした素材生産、木材加工・供給、住宅建設、木質バイオマス利用など、川上から川下までのトータルな林業振興を官民一体となって推進。なかでも、森林・林業経営を核と位置付け、FSC森林認証の取得を実現するなど、独自の「住田型森林(もり)業システム」を展開してきました。

そんな中で図らずも建設の運びとなった「住田型応急仮設住宅」には、多くの関心が寄せられ、設計図は「全国の林業地域で活用されることが災害復旧対策として重要」との観点から、希望者には無料で提供されています。

長く住める木造復興住宅を目指す、合掌の家

20メートル以上津波が上がってきたというのが嘘のように静かな入江、西舞根湾。気仙沼市内からほど近い湾を見渡す高台に、2011年10月「合掌の家」が完成しました。縦横約7メートル、高さ約6メートルの三角屋根。11畳のリビングダイニングとキッチン、トイレ、浴室、階段の上には3畳半ほどのロフト。釘や接着剤をいっさい使わず、伝統工法による木の継ぎ方で建てられたスギの家は、さわやかな香りと大きなガラス面から差し込む陽光に満たされています。

この建築の責任者であるオークヴィレッジ木造建築研究所 上野英二さんは、震災後に知り合いの陸前高田在住の大工さんから「仮設住宅としてだけでなくずっと使える木造恒久住宅がほしい」との願いを、また、交流のあったNPO法人「海は森の恋人」代表の畠山重篤さんからは「気仙沼の森から伐り出した木を使って、漁に出られない漁師が参加して家づくりができたら」との想いを聞きました。


先に建てた合掌部分を2Fにして、1Fを増築することができるという、ユニークなアイディア

そして、実現の方法を模索する中から生まれたのが、合掌の家でした。従来の仮設住宅は撤去する際に大量のゴミとなってしまうけれども、最初に三角形の仮設住宅を建てておき、後から一階部分を建てて、その上に三角形の二階とロフト部分を載せることが出来れば、いっさい無駄がなく長く住める復興住宅が出来る…。それが合掌の家の特長です。

さらに、従来の仮設住宅は平屋なので寝食分離が難しく、食事も寝るときも勉強もみんな一緒。でも、三角形だとロフトがあるので、そこを子ども部屋にしたり夫婦の寝室にしたりと空間を立体的に使うことが可能だといいます。

現在(2011年11月時点)、この合掌の家はボランティアの休憩所、宿泊所として利用されており、いずれはNPO法人「森は海の恋人」の事務所、さまざまな活動の拠点として利用される予定。「三角形で地震にも強いし、少ない材で造れるので効率が良い。そして何よりスギのあたたかみや香りがいい」と、副理事長の畠山信さん。いずれは助成金をもらってこういう建物を建てたい。建築すること、管理することによって地域の雇用が生まれるから、と想いを語っていました。

畠山さんの夢

舞根(もうね)をエコタウンとして再建したい

NPO法人「森は海の恋人」副理事長 畠山 信さん談

気仙沼市唐桑町西舞根。この舞根集落には家が54軒ありましたが、流されずに残ったのは4軒だけ。僕や兄の家も流され、高台にある実家はギリギリまで津波が上がって来たものの、かろうじて難を逃れました。流された家の人々は避難所に移動し、現在は唐桑町内の仮設住宅に入居されています。

ここまで何もなくなってしまったら、もうあとは創るだけです。
被災した舞根集落は、国が援助する高台への集団移転に手をあげました。そこで新しい家を建てるなら、電力会社に頼らずエネルギー自給できる集落をつくりたいと僕は思っています。集落ごとに5、6軒のコロニーみたいな形で電力を完全自給できたら最高だなと。エネルギー生産は、ここにあるものを使うという発想で、木質バイオマスや「海のバイオマス」で実現するのが理想です。カキを養殖していると副産物も出るし、いろいろ組み合わせると良い仕組みが出来るのではないかと。


穏やかな舞根湾に浮かぶ、新しく作り直した牡蛎やホタテの養殖いかだ群。しばらく途絶えた漁のお陰で、この海の中はとても豊かなのだそう。

実現性は薄いかもしれません。一番のハードルは、人の心持ち。便利な世の中に慣れているので、環境に配慮することに対して「良いね」とみんな言いますが、実際に自分の生活に当てはめると疑問ばかりが出て来るようです。でもあきらめず、オーストリアなどの事例を調べたり、情報を集めて準備を進めています。

そして、もう一つ、子ども達への環境教育と防災教育をやりたいと思います。
震災以前から、残念なことに子どもの海離れが進んでいました。もう一度、子どもが舟に乗ったり、海遊びができるようにしたいのです。ちょうどシーカヤックが得意な団体が海の教育をやりたいと言っているので、彼らと協力してやれると思います。サバイバル技術も、着衣泳にはじまりナイフの使い方まで、とにかく自分の身を守り抜く術を教える。合掌の家のような建て屋の中で、子どもが遊びながら暮らしながら学べるようなシステムをつくりたいのです。

この湾(西舞根湾)を、そういう環境教育・防災教育のモデル地域にして、外部から来る人の受け皿もつくって行きたいと思います。

(記事掲載月:2011年12月)

 

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